海外で活躍する日本人: Asian Leaders Career CEO 蒲原 隆さん (2)

これまでリクルートで15年間以上人材紹介事業で活躍し、37歳にしてカナダへ語学留学。シンガポール、タイでは社長を経験。現在、タイの人材紹介会社・Asian Leaders CareerのCEOである蒲原隆さんにお話を伺ってきました。蒲原さんが訴えるグローバルリーダーの必要性、日本人とタイ人の働き方の違い、37歳での語学留学・インターンシップシンガポールでの挫折など、たっぷりお話を聞くことができました。3回にわたってお届けしていきます。

第2回目は、日本人と東南アジアの人の働き方の違いをご紹介します。

第1回「グローバルリーダーの必要性」

第3回「カナダへ語学留学、シンガポールへ転勤」

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日本人と東南アジアの人の働き方について

日本人とタイ人の働き方の違いとは

– 日本人の働き方と東南アジアの人の働き方で異なる点はありますか?

 日本のドメスティックなマーケットの中でもリーダーの向き、不向きはあると思いますが、その中でもタイ人というのはリーダーにあまり向いてない人達がさらに多いです。それは、先ほど言った事業の視点というよりもSelf-comfortが最優先なんです。もちろん全員がそういうわけではありません。傾向として多い気がします。なので、日本から来ている責任者とかはもどかしいんですよね。例えば、営業マンだと自分の数字もありながらチームを任されて、タイ人も含めてどうするかといったら、嫌でも当事者意識を持ってやらざるを得ない。リーダーとしてチームとして預かっているわけですから。その時にタイ人というのは、自分が好きか嫌いか、気が乗るか乗らないかみたいなところでモチベーションが変わります。こう言ってはあれですが、タイ人はみんないいやつなんだけど、Business maturityとしては幼い。圧倒的当事者意識みたいなところは稀薄ですね。よくある事ですけど、レストランなどでサーブが遅かったり、間違ったものを出した場合、日本人だとサーブの人が「すいません」って言いますよね。そういう言葉が出るのは当事者意識があるという事です。ひょっとしたら自分はオーダーを間違えていなくて、厨房の人が間違っているっていう可能性もある。でもそこで「すいません」と言うことを植え付けられている。それは当事者だから。でもタイなら謝ったりしませんよね。「私はお客さんの言った通りに伝えた。厨房が間違っていた」と。当然謝らないですよ。謝る意味がわからないですね。でもそれはタイだけじゃなくて、東南アジアの人は比較的そういう傾向にあります。もっと言うとヨーロッパとかもそうかもしれない。日本人というのはBusiness maturity、当事者意識を植え付けられているビジネスパーソンが比較的多いですよね。

– これまでのご経験で、日本ではないような印象的なエピソードはありますか?

 JACタイランドの社長をしていた時の話なんですが。100名程度の従業員がいる会社です。例えば、今期からこのチームを大きくしようとか、戦略はこっちに向かって行こうとか、新しい戦略に合わせてチームを変えようと。それによって席のレイアウトも変わるわけですよね。日本人の場合は、「じゃあ新しいチームで頑張っていこう!」となります。ただタイ人の場合だと、ある日人事部長のおばちゃんに呼ばれるわけです。「蒲原さん、Aちゃんがトイレで泣いています」と。そうしてAちゃんと面談してみたら、「今回の席替えで私の嫌いな人がすぐ近くに来てしまって、仕事する気が起きません。」と、泣きながら言うわけです。会社を辞めたいと。そこがさっきも言った通りSelf-comfortableかどうかなんですよね

昔の僕だったら「何言ってるんだよ。仕事なんだからしょうがないだろう」って言っていたかもしれないです。でもそうやっていると単に辞めちゃって終わりなんですね、タイ人は。そこで、「わかりました、次から頑張ります!」ってならないわけです。「こんな会社、居られない」って辞めるんですね。いくらリーダーが正しいことを言っても、従業員というのは辞める権利を持っているから。そして従業員が辞めて誰が困るかっていうと、事業が困る。事業にとって最善を図るにはどうすべきか。リーダーが単に正論だけを言って、それで従業員が辞めてしまうことは、事業にとってプラスかというとプラスじゃない。その従業員が全然ダメな人だったら、ひょっとしたら辞めてもらった方がプラスかもしれないけれど。そこまで判断して辞めてもらうのであればいいけども、「たったこれだけのことで辞めちゃうの?」ってなると、やはりリーダーとして不測の事態なわけです。リーダーはタイ人の国民性とかを含めて、統治する意識を持ってなきゃならない。もちろん教育はするけれども、モチベーションもキープしてもらわなくてはいけない。やはりきちんと向き合って、まず話すというのが大事ですよね。

日本のリーダーが海外でのマネジメントで必要なこと

– リーダーの役割の1つとして、スタッフのモチベーションを高めたり、行動をおこしてもらうことがあると思います。マインドや文化が異なる現地のスタッフのマネジメントで苦労する日本人のリーダーが多いと聞きますが、現地のスタッフをマネジメントする上で気をつけるポイントなどありますか?

 日本人のトップというのは言葉にしない人が多いです。例えばタイの製造業のトップの人なんかだと、日本では工場長だったって人もいて。そういう人がタイに来ていきなりMD (Managing Director)になったりするんです。日本の工場長ってあまりコミュニケーションが上手じゃない人も多いんですけど、日本にいればみんなが上司をリスペクトしてくれて、勝手に敬ってくれる。だけどそんなのはタイにはないですからね。それに、日本人は「お前らの方から俺に近づいてきて、(技術を)盗め」とかって思うんだけど、タイ人にはそういうことはわからない。言葉にしないと伝わらないんです

なので、さっき言ったような例でも「仕事なんだから我慢してやれ」と一蹴するのではなく、まずは話を聞いてあげる。本人がなぜ泣いているのか。まずはわかってあげる、共感してあげることが大事です。嫌いな人が毎日隣に来るっていうことは、本人にとっては一大事なわけですから。ただやはり仕事なので、レイアウトを元に戻すわけにはいきませんよね。でも「お前にはこういうことを期待している」と。具体的に要望をして、具体的にRecognizeしていくという組み合わせができ始めてから、タイ人にRetentionが生まれましたね。単に緩いだけの組織だと意外にタイ人は辞めるんです張り合いがなくて。そこを勘違いする社長も多いんですけど。「タイ人って結局、仕事したくないんでしょ」と。NOマネジメント。緩々にする。そうするとそれはそれでみんな辞めていきます。それはなぜかとひも解いてみると、タイ人は認められたいという気持ちが日本人以上に強いんですね。なので、リーダーはいかにRecognitionに近いところにいるか。そしてRecognitionするには、きちんと要望しなくてはいけない。要望というのは、ノルマとか、何とかしろ、とかじゃなんですよね。「お前に期待していることはこういうことだよ」と。Expectationとか、もうちょっと言うとRequirement。そういうところをきちっと言う。そうすると、タイ人はそこをこなしたら褒めてもらいたいと思うようになるんだよね。これってよく考えたら、日本人だって社長だって、実は一緒だと思うんですね。社長が「いや、俺は認められなくたっていいよ」なんて思っているのかといえば、彼らだってオーナーや株主に認められたいんですよ。

やはり常にセットなわけで、そのためには本人に期待していることを具体的に伝える。具体的に褒める、ということですよね。なんとなく「いいね~」とか「よくやってるな!」だけじゃあまり響かない。例えば、廊下ですれ違ったり、トイレで隣になった時に「おまえ、この前言ってたあの会社、ついに面接入ったらしいじゃん!」で、ポーンと肩を叩いてやる。そうすると相手は『なんだ、そんな詳しいことまで知っているんだ』と思う。普段あまりしゃべらなくても、ふとした時に言ってやるのが結構効くんですよ。

そういうこともせずに、人事コンサル会社に高い金払って人事制度設計を頼んで、コミュニケーションも取らずに「うちはリテンション高いので…」なんて言う社長もいるんですけど、いや違いますよと。そんなことやる前にトイレで話すだけでいいんですよと。タダですよと。こういう話は以前タイの経営者セミナーで話したことがあるんですが、みんな目から鱗だったみたいですね。

言語が英語になって日本人同士のような理解度はなくても、タイ人なりに「ボスは何かを一生懸命自分に言おうとしてくれている」と思って、気持ちは伝わるんですよね。そしてそれに対して彼らも応えようとしてくれる。やっぱりコミュニケーションは大事ですよ。

JACタイランドでは3年くらい社長をやってましたけど、僕も最初来たときはわかりませんでした。イキってましたから、「赴任したらタイ人全員と面談するぞ!」と。一人ひとりと喋るって、何となく良い社長っぽいじゃないですか。そうする、みんな “I’m happy to work here” みたいなことを言うわけですよ。「サバイサバイ!(タイ語で「心地いい」)」とか。「なんだ、みんないい感じで働いてるじゃないか!」と。そう思ったら一週間後には退職届が提出されるわけですよ。そりゃ、いきなり来たボスに対して社員はそんなすぐ心を開かないですよね。でもボスとしては「こっちがせっかく時間を取っているんだから、正直に言えよ」って思うわけですよ。でも、言えないんですよね。タイにも「グレンチャイ」という遠慮する文化があるので、あまり上の人に対してオープンにならないんです。でもそれを言わないタイ人が悪いんじゃなくて、それはまだ自分が彼らの中に入っていってないだけで。

タイ人に対して「お前が変われよ!」って思っちゃう日本人経営者は多いんだけれど。日本で日本人同士だったらそれでも通じるところはあるかもしれない。でも我々の方が外国人なわけで、タイの文化があるところに我々が入ってきてるんだから。そこは前提であるのを認めた上で、自分がどう変わるかという意識を持たないと、やっぱりリーダーとして引っ張っていけないと思います。最初は心を開かないことを前提で、それでもまず話してみる。時間がかかることを自分で受け入れる。質問に対してすぐに答えがでないとイラっとする日本人は多いんだけど、そこはちょっと我慢しようよと。自分もある程度やりながら、そういう気持ち、Toleranceができた感じはありますね。

これまでリクルートで15年間以上人材紹介事業で活躍し、37歳にしてカナダへ語学留学。シンガポール、タイでは社長を...
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