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海外で活躍する日本人: TalentEx代表 越 陽二郎さん (3)

現在タイやロシアを中心にHR事業を手掛けるTalentExのCEO越陽二郎さんにお話を伺ってきました。幼少期をアメリカと日本を往復しながら帰国子女として育った越さん。海外起業で一番難しいこと、帰国子女でありながらビジネス英語でも苦労されたお話、英語が通じない非英語圏で身につけた効果的な現地語の学習方法、今後の言語の使われ方について、興味深いお話が聞くことができました。

第3回目は、越さんの考える今後の言語の使われ方についてのお話をご紹介します。

第1回「東南アジアで起業するうえで、一番難しいこと」

第2回「英語、言語の学習方法」

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人は海外の人とも母国語を使ってコミュケーションをとる時代がメインになる

– 今後はどんなことをしていきたいですか?

中長期的には、先ほどお話しした通り、事業のプラットフォームを色んな大陸に広げていきたいと思ってます。それと、もしこの会社をやっていなかったら、生涯かけてやりたい事は何ですか?と言われたら、僕は社会心理学の出身なので心理学の勉強を実践でやっていきたいというのがあるんです。ただそれとは別に、こんなプロダクトを世の中に出せたらいいな」と思っていることがひとつあります。今の事業と全然関係ないように見えるんですけれども。

いい名前がなくてちょっとイケてない表現なんですけども、「翻訳通訳グラス」みたいなものを作りたいと思っています。今、通訳機能になってくれるツールっていっぱいあるじゃないですか?それこそ、Google翻訳は皆さん日常で使っていらっしゃると思うんですけど。この前 Google が出したGoogle Pixel Budsという、マイクとイヤホンが付いていて、Google 翻訳アプリとつなぐことでリアルタイム通訳機能になるというものがあります。Google 翻訳に喋って、見せて、読んで、というものではなくて、「相手が喋っているのが聞こえて、自分が言っていること文字になって相手に見せられるもの」というようなものです。

そういうプロダクトは前々からあって、実用にどれぐらい耐えられるかとか、いろんな所がこの分野をやっているんですけれども。Google翻訳が飛躍的にこの数年で良くなっていると思っています。タイ語では、文章を訳したりとかには使ってるんですけれども、会話ではそこまでかなって感じで。やっぱりタイの言語データがまだ世界的に見て多くないからだと思うんですけど。一方でロシア語英語はほぼGoogle 翻訳で会話ができるんですよ。なので、英語がまったくできないロシアのお店のおばちゃんとかとも、「これが欲しい、これが飲みたい、それはないよ、ああないのか」というようなやり取りができるんですよ。すごい便利だなと思いつつ、これをやはりARのグラスみたいな形で実現できれば、お互いグラスをかけた状態で、僕が喋ると相手のグラスに文章が現れて、日本語で言ったのが日本語の文字で出つつ、ロシア語の文章も出てきて、これを言っているのかと。自分が話したのがグラスに出れば、自分の言葉が正しく認識されているかもわかるじゃないですか。

そういうことができるグラスというのが、恐らく翻訳的には、技術的にもデータ的にもできるようになってきているので、もうある程度は組み合わせだけでできるレベルまで来ていると思うんです。それを色んな形で、スティックだったりとか、Googleはイヤホンだったりとか。

– 翻訳と通訳の組み合わせということですね。

僕は結構、文字というのは有効だと思っています。音声認識がどれだけ発達しても、自分の言ったことが正しく捉えられているのか、それが間違っていたら相手に伝わってないじゃないですか。だから、文字で見えることは重要であると思うんです。僕は、ARグラスが通訳ツールとして機能する日はもう結構近いんじゃないかなと思います。もちろんそれは、言語を勉強しなくていいというわけではなくて、それがあることによって、まったく新しい国に行った時にも、ある程度意思疎通ができますよね。それは40%、60%かもしれない。ただ、タイ人と日本人、ロシア人と日本人となった時に、まったく言葉の通じない者同士なのが40%でも50%でもコミュニケーションができたらすごく助かるじゃないですか?

– 確かに英語が通じない国に行く時のコミュケーションツールとして便利だと思います。

うちはミャンマー人のメイドさんにフルタイムで毎日来てもらっています。2歳の双子がいるので、てんやわんやなんです。彼女は英語も日本語もほとんどできないし、うちの嫁さんも英語があまりできないので、コミュニケーションが取れないんです。ただ、翻訳通訳グラスがあることによって、たぶんお互いにコミュニケーションができるようになるんですね。「スーパーへ行って、これとこれとこれを買ってきてください。もしオレンジジュースがなかったら、リンゴジュースでいいです。ヨーグルト買ってきて欲しいけど、ストロベリー味がなかったら買わなくていいです」とか。それくらいの意思疎通はできると思うんですよ。ここに通訳を雇って、ずっといてもらうわけにはいかないですよね。でもこのグラスがあることによって、今の0の状況から大きな変化が起こると思っています。これはもちろん、僕が自分で生きながら直面している苦労だから何とかしたい、っていうのもあるんですけれども。

今、僕らがWakuwakuの事業でやっていることも、人を海外から日本に送りたいっていうことではなくて、言語ギャップを埋めようとしているわけです。もちろん、例えばビジネスミーティングでは間違っちゃいけない。60%じゃダメ。契約書の金額を間違っていてもダメ。そういうところはやはり大事だと思います。でも、そうではない場面。人を持ってくるのでは成り立たない場面というのはたくさんあると思っていて。そういうところを埋められたら事業的にもつながりがありますし、僕らとしてもやりがいがある。そうなると、僕らの子どもの世代はたぶんガラッと世界が変わるでしょう。

– 将来の子ども達は英語を勉強しなくなるかもしれませんね。

もちろん英語は勉強する。できなかったら、リアルタイムな会話についていけないかもしれない。だから勉強はするけれど、第二外国語同士、要は母国語じゃない者同士でコミュニケーションするって、意味は通じても気持ちが乗らないところがあるじゃないですか。僕は15歳までアメリカで育ったので、まあネイティブに近い感じで英語喋れる、とは周りから言われますけれども。

でも僕は、英語でずっと喋ると結構疲れちゃうんですよ。どうしても自分の気持ちを乗せて言おうと思った時に、同じ意味のことを言っても、やはり日本語で言った方がすっきりする部分はあります。もしそれが、僕が英語で言っても、日本語で言っても、相手に伝わるのが同じ80%だったらば、日本語で言った方が、少なくとも自分は100%出せているから気持ちいいじゃないですか?たぶん僕らの子どもの世代には、もう母国語で喋るというのが、ある程度世界的なコミュニケーションの中でも増えてくるのではないかなという風に思っています。例えば、誰かと結婚して、その人と100%意思疎通したいと言うのであれば、言語を勉強するということは依然として残ります。それをたぶん大きくカバーしていけるような商材になっていくのではないか、という気はします。

– 最後に、海外へ行きたい、英語を勉強したい、海外で起業したいという読者へのメッセージをお願いします

僕は海外起業とかは一切勧めていません(笑)。でも、海外に出たいとか、今の現状を何か変えたいと思っていて、もし1か月くらい生きていけるお金があるのであれば、いったん航空券を買って日本を出ることをお勧めします。

特に東京にいる方はそうだと思うんですけど、言いようのない呪縛みたいなものが東京で生きているとある気がします。一旦海外に出ると、年金とか貯蓄とか心配しなくても、とりあえずなんとか生きていけるんだなと感じることがあります。70歳になった時の心配をするより、まずはここ1年、2年、5年の自分の人生を考えることの方が大事なんじゃないか、と思ったり。タイ人の「宵越しの金は持たない」みたいなの見ていると、心配するだけ損なんだろうとか。うつ病とか一切ならないような人たちがいるんだなとか。すごく人生の見方が変わると思います。

アメリカでの生活を経験した中で、一つ感謝していることがあります。トーマス・ジェファソンが書いた「独立宣言」の中に、「全ての人は幸せを追求する権利がある」“The pursuit of happiness.”というところがあって。僕はそれを人生の軸として大事に持っているんです。やっぱり、会社に対する忠誠、義理、貢献だったり、自分の家族を守ること、親孝行すること、色々大事なことはあるんですけれど、でも最終的に自分の人生は自分ひとりしか責任は取れない」わけで。その時、自分の幸せというものに対して素直に努力していいんじゃないかと思うんです。そういうものを一旦、いろんなものから離れて考えるのに、海外に出るっていうのは結構いい機会じゃないかなと思います。ある意味、自分の身一つで出るって言うのは、何にも縛られないというチャンスでもあると思うので、まあ帰りたかったら帰ればいいし。こっちでも生きていけるんだったら、チャンス探して、そういうのに自分が合うと思うのであれば、いくらでも道はあると思うので。そういう方は一回出てみる、って言うのをお勧めしたいかな。

海外に居る人はみんな言うかもしれませんけどね。ただ海外起業するかどうかはよくよく考えた方がいいです(笑)。特に会社をシンガポールだタイだと言わず、とりあえず東京に一個を作っておいた方がいいんじゃないかな?と思っています。海外起業については、また今度。

現在タイやロシアを中心にHR事業を手掛けるTalentExのCEO越陽二郎さんにお話を伺ってきました。幼少期をア...
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