ある日Twitterでこんなツイートが回ってきました。
台湾北東部の寒渓など4村では、日本語と先住民タイヤル族の言語が混ざって形成された新言語「宜蘭クレオール」が中高年を中心に話され、現地では「ニホンゴ」などと呼ばれています。村人たちの会話を撮影しました。(賢)フルバージョンは→https://t.co/gWPg5lDeHz pic.twitter.com/u0vP8ju32O
— 毎日新聞映像グループ (@eizo_desk) August 1, 2018
タイヤル族 (アタヤル族とも呼ばれる) は台湾に住む16の先住民族の内の一つです。元々山岳地帯で生活をしていたタイヤルの人々ですが、日本統治時代の政策によって平地へ移住を強いられます。そこには言語の異なる部族もおり、互いにコミュニケーションをとるために民族の言葉と日本語、中国語などがミックスされた新しい言語を生み出しました。それが現在「宜蘭クレオール」と呼ばれている新しい言語で、今でも一部のタイヤル族によって使用されています。 (下記リンクの動画で詳しく説明されていますので、興味のある方は御覧になってみてください。)
同じルーツを持つ韓国語との類似性とはまた異なり、日本語のそれ自体がミックスされている言語なんて聞いたことなかったので、まず私は単純に言語として興味を惹かれました。ですが、その背景には日本の過去の政策によって失われた先住民の文化があることを知りました。そもそも台湾のこと、台湾先住民族たちのことも恥ずかしながらあまり知識がありませんでしたので、台湾を訪れた際に色々知ってみたいと思ったのです。
↓前回の滞在記はこちら。
博物館
台湾には各地至る所に先住民族をテーマにした博物館があります。以下は私が訪れたところ。
順益台湾原住民博物館
先住民族のことが知りたいのであれば、まず順益台湾原住民博物館を訪れるのが良いでしょう。先住民族を専門に扱った博物館で、道具や民族衣装の数々が展示されています。なんと日本人スタッフの方がいらっしゃり、事前に予約をして館内ツアーをしていただけました。非常に詳しく先住民族の歴史を知ることができて、勉強になりました。
国立故宮博物院のすぐ近くに位置しており、国立故宮博物院とのジョイントチケットを購入すれば、それぞれ安く入館できてお得です。
台湾国立博物館
台湾国立博物館には、複数の先住民族の特徴や文化、衣類などの展示がされているコーナーがありました。各民族の衣装を着た小さなフィギュアが飾られていて、とてもかわいらしかったです。
蘭陽博物館
宜蘭県は頭城 (トウチェン) 駅から徒歩20分ほどのところにある蘭陽博物館には、タイヤル族の特徴、山岳地帯に住んでいた頃の暮らしを再現した模型や映像が展示されています。他の展示も興味深いですし、建物自体がド迫力で素晴らしいです。入場料100元。
非常にリアルですが、模型です!
泰雅文物館
同じく宜蘭県の南澳 (ナンアオ) 駅から徒歩15分程のところには、タイヤル族博物館。タイヤル族が実際に使用していた道具や衣装、世界各国の口琴の展示されています。入場無料。
東岳村を訪れた
こちらの動画に、タイヤル族が住む東岳村が紹介されていました。
折角台湾にいるのだから、この機会に東岳村に訪れてみようと思いました。
東岳村は、台北から電車で2時間程度のところにあります。途中で各駅停車に乗り変えて、東澳 (ドンアオ) 駅で下車。私が訪れた日はあいにくの雨でした。
駅前で早速トビウオがお出迎えしてくれます。
小さくこぢんまりした街です。山に囲まれていて、のどかで気持ちがいいです。
タイヤル族のデザインであるひし形の模様や絵が街中至る所にあります。
学校は校庭がだだっ広くて、走ったら気持ちよさそうです。タイヤル語の授業もあるそうで、ルーツをとても大事にしていることがわかります。
近所に東岳湧泉という天然のプールがあるようなので行ってみることにしました。自然の中をズンズコと行きます。
15分ほど歩くと人だかりが見えてきました。トビウオも売っています!
地元の家族連れで賑わっていました。子供たちがはしゃいでます。
私も腰かけて水に足を入れてみましたが、めちゃめちゃ冷たい。天気のせいもあるでしょうが、とても泳げる水温ではありませんでした。子供たちみんなタフです。
一休みしてから、トビウオ売りのお母さんに話しかけてみました。
お母さんが中国語で (おそらく) 「いらっしゃい~」と客寄せしていたので、近寄って思い切って「トビヨ?」と聞くと「あなた日本人?」と日本語で返してくれました。後ろにいたお父さんも日本語で話しかけてくれました。
網にトビウオが何十尾も干されてます。3尾で100元。お昼ご飯に購入しました。「見てて、こうやって骨を取るのよ。アゴが強かったら全部食べられるからね」とご丁寧にデモンストレーションしてくれるお母さん。瓶詰にされているものもあり、こちらはご飯のおかずにピッタリの味でした。
「これ作るの大変なのよ。数時間置きに手入れしなきゃいけないから、夜寝れないの」と笑いながらおっしゃっていました。私が訪れたのは5月半ばの週末でしたが、毎月毎日売っているわけじゃなさそうで、とてもラッキーでした。
椅子に腰かけてトビウオをムシャムシャと食べながら、小一時間ほどお話をしました。
ご夫婦はタイヤル族で、日本語はお母さんから習ったそうです。「でも、読み書きはできないのよ」とのことでした。ご夫婦で話す時はタイヤル語、おそらく私が映像でみた宜蘭クレオールのようでした。チャイニーズ系台湾人の方と話される時は流暢な北京語です。ちなみに娘さんは日本に留学して、今は通訳として台湾で働いているそうです。
タイヤル族のことを聞いてみると「民族衣装は特別な機会がないと着ないし、タイヤルの料理も、お年寄りがみんな亡くなっちゃったからね、今はもう食べないね」とおっしゃってました。タイヤル語で「ありがとう」は何と言うんですか?と聞くと、「南澳の部落では○○○って言うけど、この部落では『ありがとう』って言うよ」とのこと。部落によって使う言葉が異なるというのも、非常に興味深かったです。
お母さんの年はちょうど私の親と同じ年でした。こうして座って話していると、日本にいる田舎のお母さんお父さんと何も変わりません。
お母さんは用事ができたのか、途中でお客さんとどこかへ。雨が少し強くなってきたころ、電車の時間が迫っていましたので、お父さんにお礼を言って駅へ向かいました。お父さんは最後に「また時間があったら、遊びに来なさい」と声をかけてくれました。よそ者の私に暖かく接してくださり、非常に嬉しい気持ちでした。短い滞在でしたが私にとっては心に残る出会いでした。
日本にいるだけでは知ることができないことは多くあります。英語や海外に興味を持って、日本を飛び出して、知らない文化に触れ、世界中の人と繋がりあう。あなたにとってeigo塾がそんなきっかけになれたら嬉しいです。
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昭和59年生まれ。東京都出身。21歳の時にイギリスへ約半年間の語学留学。28歳の時にワーホリでカナダへ。1年半滞在した後、30歳でマレーシアの音楽学校に入学。卒業後はフィリピンで社内翻訳者として働き、現在はフリーランスで翻訳をしながら、音楽を作ったり旅行したりしてます。TOEICは950点◎。フレディ・マーキュリーが永遠のアイドル。2か月の台湾ノマド生活をまとめた『台湾滞在記: 生活費 月6万円で一周 』がKindleで販売中。