海外で活躍する日本人: Asian Leaders Career CEO 蒲原 隆さん (1)

これまでリクルートで15年間以上人材紹介事業で活躍し、37歳にしてカナダへ語学留学。シンガポール、タイでは社長を経験。現在、タイの人材紹介会社・Asian Leaders CareerのCEOである蒲原隆さんにお話を伺ってきました。蒲原さんが訴えるグローバルリーダーの必要性、日本人とタイ人の働き方の違い、37歳での語学留学・インターンシップシンガポールでの挫折など、たっぷりお話を聞くことができました。3回にわたってお届けしていきます。

第1回目は、グローバルリーダーの必要性についてのお話です。

第2回「日本人と東南アジアの人の働き方について」

第3回「カナダへ語学留学、シンガポールへ転勤」

【蒲原 隆さん プロフィール】

1988年 九州大学文学部文学科(フランス文学専攻)卒業、リクルート入社
1996年 リクルート人材センター(現・リクルートキャリア)へ移籍
2003年 同社退社 カナダへ語学留学
2004年 帰国後、リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)入社
2009年 JAC Recruitment (Japan) 入社
2010年 JAC Recruitment (Singapore)へ移籍
2011年 JAC Recruitment (Thailand)・Managing Director(代表取締役社長)に就任
2013年 JAC Recruitment (Singapore)・Managing Director(代表取締役社長)およびJAC Recruitment Asia (JRA)のCOOへ就任
2016年 Asian Leaders Career をシンガポールに設立、CEOに就任
2017年 Asian Leaders Career をタイに設立
2018年 Bee Consultant社の全株式を取得、完全子会社化

出典:http://al-career.com/

スポンサーリンク

グローバルリーダーの必要性

1/25のスキル = 1/5 × 1/5 のスキルを持つこと

つい最近「人生100年時代の長期キャリアを生き抜くグローバルリーダーへの道」というタイトルで講演をされました。そもそもグローバルリーダーとは何なのか、今なぜグローバルリーダーが必要なのでしょうか?

「グローバルリーダー」の定義は、「グローバル」と「リーダー」、それぞれ違うアイテムがコンバインした状態であると考えています。では一般的にリーダーとはなんやねん?ということですが、僕が感じるリーダーというのは、人を引っ張っていったり、まとめたり、事業を引っ張っていく人」です。言ってしまえば簡単ですが、リーダーになる人の思考や行動というのがあります。若い人は割と、リーダーにはあまりなりたくないと言います。それはなぜか?リーダーは純粋に割に合わない。面倒くさい。責任だったり、業務の負荷であったり、時には汚れ役をやらなくちゃいけない。その割には給料が増えるわけじゃないし。もっと言うと、役職でいえばリーダーというポジションもあるけれども、例えばマネージャー、あるいは事業責任者。これはリーダーですよね。そうなるとますます責任は多くなるし、自分は引っ張っていくより支える方が好きだ、ということもある。そうなると、リーダーにはなりたくない。要は面倒くさいということですね。

じゃあ会社は単にリーダーに不利益だけを与えているのか?というとそんなことはなくて、会社というのはよく見ているんです。リーダーは会社にとって必ず必要な存在です。リーダーというのは、みんながなりたがらないが故に意思表示をしてリーダーになっていく、ということ自体が希少性があるし、会社にとってバリューを産む

グローバルの定義は、「海外に身を置く。留学にしても、働くにしても、日本外のところでSurviveしていくこと」。これがグローバルの定義です。
「リーダー」は人や事業を引っ張る力。「グローバル」はそれを海外で実践する。この二つの組み合わせが、「グローバルリーダー」。これは将来的にも AIやロボットに置き換わらない。これはヒューマンがやることが前提で定義に入っています。たとえ優秀なロボットが来て、「彼がリーダーです」といっても、人は従いませんよ。ロボットはリーダーにはなれない。スペシャリストの代行ならロボットができる分野があるかもしれない。しかし、事業を引っ張る、身柄を海外に置く、というのはヒューマンがやることが定義に入っています。良い意味で、これはAIやロボットには置き換わらないです。なので、グローバルリーダーの希少性はずっとあるものだと思っています。

先ほども言ったように、みんなリーダーにはなりたくないと思っている。なりたくないからこそ希少価値があって、これは大きなチャンスなんです。講演でどれだけ僕が「グローバル」と「リーダー」をお薦めしても、その瞬間は心が動かされても、行動に移さない人が多いんです。だからこそ、実際に行動に移す人はラッキーなんですよ。みんなこぞってやり出してしまったら、そっちはマジョリティになりますからね。「海外に行きたいな~」なんて言うけれども、やっぱり行かない人が多い。

僕も転職活動のお手伝いをしていて、日本からの問い合わせはいっぱいあります。「良い求人があったら海外に行きたいと思っています。」ただし、そんな人は絶対に来ない(笑)。いくら言ったってやっぱり来ないんです。

海外に身を置く。留学にしても、働くにしても、日本外のところでSurviveしていく。これがグローバルの定義だとしたら、やはりそれは希少価値がいつまでもある。そしてリーダーにも希少価値がある。

人がやらないからこそ希少価値があるということですが、グローバルリーダーは数字で表すとしたら、どれくらいの希少価値があるのでしょうか?

25人に1人くらいの希少性があると思っています。数値で言うと4%です。普通に日本でサラリーマンをしていたら、年収1000万円以上の人は4%ともいわれています。4%、25人に1人の存在になる。要するに希少性、バリューを出そうと思うと、昭和時代のモーレツ社員であれば、他の24人に打ち勝つ!という考え方です。そうすると、大企業で営業部長になれて、年収も1000万円ぐらいです。そういう人たちはもちろん今の会社でも実際存在しているわけです。それを勝ち組と仮定すれば、今までのやり方はそうでした。

例えば、僕がずっとリクルートの仕事を続けていたら25人に1人の営業部長になれたか?というと、なれなかったと思う。多分25人中の13番目くらいじゃないですかね(笑)。でも、あのままずっと1/25を目指して頑張っていても、やっぱりどこかで「あぁ、ダメだった」ってなっていた。45歳になって現実を突きつけられて、じゃあそこから転職しようか、英語を勉強しようかといっても、さすがにバリューは下がっていく。

やはり、自分でしっかり主体的に選択していく、25人に1人の存在になろうとする中で、割と目指しやすいのがグローバルリーダーです。これは5人に1人のスキルを2つ持つということです。

例えば、リーダーになりたくない人が結構いるわけですから、実際になれば5人に1人かもしれませんよね。もう一つが、海外勤務。海外に留学したり、海外に身を置いたり、みんな行きたいと言っても結局来ないので、これも5人に1人です。この1/5のスキルを2つ持てば1/25の希少性を持つわけです。なので、グローバルリーダーというのは比較的わかりやすくて目指しやすい、1/5×1/5だと思います。

1/5というのはいろんなパターンがあると思います。
例えば、上司が頭の中でざっくりとした事業のイメージを持っている。それを部下がわかりやすいイメージに落とし込んで上司に提案する。それも一つのスキルですよね。これとリーダーがくっつけば、これも1/25になるかもしれない。または、これを海外でやったらこれも1/25かもしれない。ムスリムの方が身に付けるヒジャブという被り物に詳しくて、これとグローバルを組み合わせたら起業につながるかもしれない。例えば、僕は高校野球が大好きなんだけど、これとグローバルを組み合わせて海外で高校野球カフェをやったら、それをやっているのは他にいないだろうから、すごくニッチですよね。何が起こるかわからないですよ。5人に1人というのはなんでもあり得るわけですよね。

リーダーになる人の思考や行動があるとおっしゃっていましたが、リーダーに向いている人と向いていない人の特徴はありますか?

ここで冒頭の「リーダーの定義」に戻りますが、リーダーになるという人とそうではない人っていうのは、若い時から見ていて行動が違うんですね。例えば、営業マンだとしましょう。「おたくの商品、高いね?値引きしてくれないのなら買わないよ?」なんて会話は営業現場ではよくあることです。ここでリーダー的思考のない人は、「うちの商品は高い。値段を下げれば売れるのに、上の人はわかってない。うちの会社にはブランド力がないから売れない」と考える。結果的に自分のせいではない、仕方がないと考える。一方、リーダー的思考のある人の場合、「うちの商品と金額が合っていない。商品・サービスの品質をこの金額の水準に上げるにはどうすれば良いのか?」という発想をする。志が高く、一人では考えきれないのでみんなと議論したり、人に働きかけたりしてみる。一言でいうならば、リーダーというのは事業に対する当事者意識です。

リーダーではない人は結局、自分にとってComfortableかどうか?という発想になりがちです。でも、リーダーは事業にとって最善かどうかを常に考えていく。これは意識したり訓練したりしないとできないです。人間弱いから。やはりリーダーになろうと思うことが大事ですよね。

リーダーは事業に対する当事者意識であると。蒲原さん自身はどのように「当事者意識」を持つようになったのか、そもそも持っていたものなのか、それとも仕事をしながら鍛えてこられたのでしょうか?

僕はリクルートで育ちました。リクルートというのは、途中で転職してベンチャーに行ったりとか、起業したり、若くして事業の責任者になる人が多いんです。それは徹底的に植え付けられる二つのものに表れていると思います。一つは、圧倒的当事者意識。「誰かが何かしてくれる」という発言があれば「ダサイよお前!お前がどうするんだよ?」みたいなね。そういうことに常にさらされる。当事者として考える、これがリーダーのOriginだと思います。二つ目が、「自ら機会を作り、機会によって自らを変えよ」。これはリーダーのMindsetをよく表していると思う。英語で言えば “Create an opportunity by yourself, and Change yourself by the opportunity.”。AN opportunityとTHE opportunityという部分によく表れてると思います。まったく何もないところに、AN opportunityを自分自身で作る。そして作り上げたTHE opportunityで自分自身が変わっていく。これがリクルートの強みだと思います。つまり当事者意識です。売れるも売れないもすべて自分に起因している。売れないのであれば、どう変えていくのか。自分で発想していき、機会を作って、それによって自分も成長していく。

まずは与えられたミッションは最低限しっかりこなしているっていうのが前提だと思います。これはパソコンでいうOSみたいなもので、ここがないとリーダーが何を言っても土台が揺らぎます。やはりビジネスの基礎筋肉というのは若いうちにきっちりつける必要があります。
新卒の学生に「キャリアを考えたらどの職種が有利ですか?経理ですか?営業ですか?マーケティングですか?」という質問をよくされます。僕は結局どれも一緒だと思います。新卒で入って配属されたのがたまたま経理であっても、ITであっても、営業であっても、そんなに変わらない。所詮、基礎筋肉つける場であって、将来リーダーになるために、まずは左腕の筋肉から鍛えるのか、右なのか、足なのか、ただスタートの違いでしかない。リーダーとか事業責任者が、まったくわからない範囲があるってことはないですから。いくら営業マンであっても、最後事業責任者になればPL も見るし、経理も見る。ITはわからない、というわけにはいかない。結局上になればなるほど最後には全部つながってくるので、無駄なことはないです。比較的若い人はショートカットを考えているけれども、あんまりそう考えないで、無駄なことはないのでやってください、ということですね。

決断力の重要性

以前、蒲原さんが書かれたブログの中で、リーダーに求められる資質の一つとして「決断力」が重要であるということをおっしゃっています。ご自身が、決断力を発揮するために気をつけていることはありますか?

矛盾する言い方ですが、「決断力を身につけるには、決断していく」ということです。リーダーや事業責任者には、決断の場面が次々に訪れます。決めた結果がどうなるかはわかりません。でも「決める」ということ自体に意味があると思います。信じていくということです。決断すること自体に、自分の中に価値を生むものだと言い聞かせて、その機会を次々と作るということです。

経営者や事業責任者はわかっていただけると思いますが、日々決断の場面にさらされます。決断したからには「この方向性で、こうなるから、みんなついて来い!」と言うけれども、本当にそうなるかは自分だってわかりませんよ。でもみんなから「大丈夫ですかね?」と言われたら「大丈夫!」と言わなきゃいけない。本当は自分だってちょっと不安だよ(笑)。未来のことなんてわからない。でも、そこで決めてきちんと言葉にしていく。これがリーダーの役割だからしょうがないと、自分に言い聞かせていく。

実は人間というのは、日々細い決断をいっぱいしています。人は1日に9000回決断するって言われています。例えば、朝は何時に起きるとか、朝にシャワーをするか、夜に風呂に入るか、何両目の車両に乗るとか、誰からも言われなくても、いつのまにか決断をしています。「私は決断力ないです」なんて言っていても、実はみんな決断しているんです。ということは、決める力というのは本来誰しも持っているんですよ。ポイントはそれをいかに引き出すか。ビジネスにおいても、自分で決めて、考えていることを言葉にして、みんなに伝えるということ自体が8割方リーダーの役割だし、決断力だと思います。そして結果がその通りにならなかったとしても、またそこで決断をすればいいだけです。決めないとその次の決断が来ないですよね?いつまでも決めないというのが、一番の悪だと僕は思うんです。100%の結果を出そうとしていつまでも吟味して決めないというのは、リーダーにあまり向いていないと僕は思う。リーダーというのは、次々と決めていく。それがBestじゃなかったとしても、決めなかった前の状態よりBetterになっていたら良いじゃないかと。そこでまた次の決断の機会が来ているんだから。でも、決めなかったらその世界観もないわけで。決めること自体がすごく重要だと思っています。決断力を養うには決断していくということですよね。

BestよりもBetterであり、先延ばしをせずに何度でも決断していくと。

そうですね。経験上、吟味して決断してもそうそうBestにはならないですよ。思った通りになった!というのはあんまりなくて。だとしたら「思った通りにならない」という余地は持っておいた方が良いですよね。時間をかけてBestを選んだとしても、最高にBestにならないのなら、いち早くBetterな選択をすると。これができる人はリーダーに向いているんじゃないかなと思います。吟味して100%を目指す人は、思い通りにならなかった時に「ああしておけばよかった…」とよく言うんですよね。英語で言えば “should have + 過去分詞”ですよね。「何々すべきだった」。そんなこと言ったって、その時点では持っている材料で判断しているわけで、そこから進んだ自分を見て「ああすべきだった」なんて言ったってできないんだから。

決断が遅い人ほど「〇〇した方が良かった」みたいな後悔の台詞を言いがちなんですよね。次々と決断する人はBetterであれば言い訳だから「あ、決めてよかった」って。「〇〇すべきだった」という発言がないんですよ。

やっぱり、リーダーが「こうしとけばよかった」という発言をすると、周りからしたらすごく不安になりますよね。そういう発想や言葉というのは良くないです。吟味して100%を目指す人は大体そういう傾向にあるので、そういうタイプの人はリーダーにあまり向かないかな、と僕は思っています。

これまでリクルートで15年間以上人材紹介事業で活躍し、37歳にしてカナダへ語学留学。シンガポール、タイでは社長を...
これまでリクルートで15年間以上人材紹介事業で活躍し、37歳にしてカナダへ語学留学。シンガポール、タイでは社長を...

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする